2015センター試験点描

2015.1.22

 この文書は2015年センター試験から,「やや難」とされる問題をピックアップし,レベルを分析するとともに傾向を解説したものです。学習方針を立てる上で参考にしてください。

 なお,引用している東京凰籃学院の教材は一部を除き,ほとんどが個別指導で使用している最も基礎レベルのものです。

英語第2問A



問1

単純な熟語問題ですが,中堅私大レベルでしょう。正解は1です。

know better than 「もっと分別がある」

東京凰籃学院教材から - ex.1

He knew ( ) than to tell the stories to her.

問2

heが主語なので,正解は3です。

have ~ (過去分詞)「~を…される」「~を…してもらう」

これは高1レベルの基本事項。高校入試でも頻出です。

東京凰籃学院教材から - ex.2

誤りを訂正せよ。He was stolen his pen.

問3

「~という点で」の意味なので,正解は3。 in that は大学のレベルにかかわらずときどき見かけますが,頻度は低く,マイナーといっていいでしょう。難しい部類に属します。

東京凰籃学院教材から - ex.3

I like him ( ) that he is honest and candid.

問4

hopeとwishの使い分け問題です。まだ可能性のある未来のことを望んでいるのでhope,正解は2です。こまかい知識で,難問の部類に属します。

「孫は歌手としての道を歩み始めたの。でも本当は将来,女優にもなってほしいわ。」

wishは,可能性がほぼない場合や,空想的な場合に用い,通常助動詞としてwouldをとります。

東京凰籃学院教材から - ex.4

I (1. like 2. wish 3. want 4. hope) you will pass the examination.

問5

単純な時制の一致で,正解は1です。これはさすがに,中2の接続詞の単元で学ぶ,基本中の基本です。

東京凰籃学院教材から - ex.5

英訳せよ。

あなたが彼を見たとき,彼は何をしていましたか。

問6

付帯状況を表す分詞構文なので正解は3。高1レベルでしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.6

和訳せよ。

Ann came out of the room, shouting for help.

問7

「~を背景にして」の意味なのでagainstで,正解は1。難関私大でも出題頻度が低く,難問といえるでしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.7

最上級を用いて書き換えよ。

I never saw a finer sight than the figure of Mt. Fuji against the blue sky.

東京凰籃学院教材から - ex.8

和訳せよ。

We recognize patterns as figures against a background whether or not the patterns are familiar.

問8

意見を聞くときには,what do you say ~? ですが,疑問文にdo you sayなどが割り込むときには全体が肯定文の形となります(連鎖構文)。連鎖構文は難関私大ではごく普通に頻出ですが,センター試験としてはやや難しい部類にはいるでしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.9

誤りを訂正せよ。

(1) My brother,whom I expected would help me,did not appear.

(2) Where do you know I bought this book?

問9

so ~ a ~ thatの構文なので,迷わず正解は2。高1レベルの基本問題でしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.10

Mr. Green is (1. such 2. too 3. so 4. very) nice a teacher that every student likes him.

問10

時制の一致と,特定のものを表す冠詞theの組み合わせで,正解は4。「特定の事件の起きた次の」は,the next ~ で,冠詞のルール以前にほとんど熟語化していますので,次のような問題で慣れておけば自然に出てくるフレーズです。空欄は2箇所ありますが,基本問題といっていいでしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.11

(1. When 2. So much 3. For 4. Since) the work had tired him, he did not begin his journey the next day.

以上見てきたように,確かに一部には難しいものが入っていますが,よく見てみれば,どれも参考書や問題集に出ているものばかりであり,網羅的対策が十分可能だということがわかります。上手に勉強して,満点を狙ってもいい構成です。無用の恐れは取り除いていきましょう。

世界史B第3問B


問4

清の八旗は基本中の基本で,「サルフの戦い」から即座に明とわかります。よって正解は4。

次のような問題をやっておけばサルフの戦いは楽勝でしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.12

1619年,ヌルハチが明軍に大勝し後金が遼東に進出することとなった戦いは何か。(答え:サルフの戦い)

しかしここで注意したいのは,これを知らなくても解けるということです。

選択肢にある南宋は逃亡政権であり,さしたる戦争遂行能力があるとは思えません。さらに,南宋というからには,南部にあるわけで,北方騎馬民族と戦うというのは,不自然です。

というような,常識的なところからも正解が得られるわけで,何でもかんでも知らなければならないという思いこみは,捨てた方がよさそうです。

問5

アズハル学院はカイロですから,即座に1が正解とわかります。残りの選択肢も基本事項です。

東京凰籃学院教材から - ex.13

972年,カイロに創設されたイスラム神学研究を主とする大学の名は?(答え:アズハル大学)

この問題は,2002年の東大的中リストにも出ています。

問6

だいたいの時期を知っておけば十分6が選べるでしょう。

連想は,

ですから,順番は明らかで,年号を知らなくても正解できます。いちおう以下のような問題を勉強しておけば有利ですが,必要というわけではありません。

東京凰籃学院教材から - ex.14

西ローマ・ゲルマン連合軍が,アッティラを破ったのは何という戦いか。(答え:カタラウヌムの戦い)

東京凰籃学院教材から - ex.15

5世紀中頃, アッティラはフン族の軍隊を率いてガリアに侵攻した。ローマは西ゴートなどのゲルマン諸族の支援を得て,451年(   )でこうしたフン族の侵入を撃退することができた。(答え:カタラウヌム)

東京凰籃学院教材から - ex.16

6世紀半ば,突厥とササン朝に滅ぼされたイラン系遊牧民の名は?(答え:エフタル)

東京凰籃学院教材から - ex.17

5世紀から8世紀にかけての中央アジアで勢力をのばした遊牧民を,古いものから順に並べたものとして適当なものを一つ選びなさい。
① ウイグル-エフタル-突厥 ② ウイグル-突厥-エフタル ③ エフタル-突厥-ウイグル ④ エフタル-ウイグル-突厥 ⑤ 突厥-ウイグル-エフタル(答え:③)

東京凰籃学院教材から - ex.18

566年頃,ササン朝ペルシアなどにより滅ぼされた中央アジアの遊牧民は何か。(答え:エフタル)

東京凰籃学院教材から - ex.19

カラ-ハン朝を倒して12世紀に建てられた王朝の名とその創立者の名を記せ。(答え:カラ=キタイ(西遼),耶律大石)

東京凰籃学院教材から - ex.20

完顔阿骨打は,12世紀初め遼の支配に抵抗して金をたてた。宋はこの新興の金と結んで遼をほろぼした。このとき遼の皇族耶律大石は中央アジアにのがれ,トルコ系の(   )を倒してカラ=キタイ(西遼)をたてた。(答え:カラ=ハン朝)

以上世界史について見てきましたが,センター試験ですから,詳しい知識は必要ありません。ときに,基本といわれることを知らなくても正解できてしまうわけで,知らなくてもいいことを知らなければいけないと思いこむと,無駄な勉強につながます。それよりも,常識を働かせるためのテーマ性を大事にしましょう。

ちなみに,出題ミスとして有名になってしまった第4問の問8です。

問題文の「時代に」が,「作られた」にかかっているのか「改訂して」にかかっているのかが不明で,2と4がともに正解ということでしたが,通常,授時暦は元,というのがあまりにも基本的かつ定番化しているので,出題者がうっかり油断してしまったのでしょう。受験生の側も,ほとんどは素直に2を選んだことでしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.21

 中国では元の時代に暦法の改革がおこなわれ,( (11) )のつくった( (12) )暦にはアラビアの天文学の成果がとりいれられているが,これはのちに日本の江戸時代の( (13) )暦にも影響した。(答え:11 郭守敬 12 授時 13 貞享)

これは,2007年の東大的中リストにも出ています。

数学1A第2問[1]

(1)は公式からただちに1を選べます。

東京凰籃学院教材から - ex.22

「$x>0$かつ$y>0$ならば$xy>0$である」の対偶を述べよ。

東京凰籃学院教材から - ex.23

「$a>b$かつ$a+b>0$ならば$a^2>b^2$である」の対偶を述べよ。

(2)が難しいということなのですが,単に列挙して調べるだけです。(1)に惑わされて対偶をとったりしてはいけません

$p_1$かつ$p_2$とは,$n$も$n+2$も素数ということですから,3,5,11,17,29だけです。そのうち,$\overline{q_1}$かつ$q_2$というのは,1を足すと5の倍数にはならないけれども,6の倍数にはなるということなので,5,11,17が該当します。結局,反例は3と29です。

このように,言葉で考える力,つまり言語力を要求しています

東京凰籃学院教材から - ex.24

整数$a$,$b$について,$ab$が3の倍数ならば,$a$または$b$は3の倍数であることを証明せよ。

みたいな頻出問題より,むしろ簡単といえますが,難しく考えすぎると,はまるかもしれません。

化学第5問 問3

計算問題で,二次並みに難しいとされますが,数値が非常に易しく設定されているため,暗算でも解けます

ポリビニルアルコール88gの半分,44gがアセタール化されると考えます。そのとき,問題にある繰り返し単位(式量44)あたり,OHのHが取れて,CH$_2=14$の半分がくっつくので,44gが$44-1+7=50$ gになります。よってビニロンは$50+44=94$ gで,選択肢2が正解です。

本当の二次試験は,次のようなレベルになります。

東京凰籃学院教材から - ex.25

ポリ酢酸ビニル1kgを完全に加水分解してポリビニルアルコールにした。この分子中のヒドロキシル基の32%をホルムアルデヒドでアセタール化するのに,40%のホルマリン何gが必要であるか。

センター試験が,いかに易しく作られているかが,わかるでしょう。

化学第6問 問3

シクロデキストリン1分子あたり6個のグリコシド結合があります(下図の赤い酸素)から,必要な水は$0.10\times 18\times 6=7.2$ gで,暗算で一発です。

計算自体信じられない易しさですが,受験生が見たことのない絵柄でびびらせようとするタイプの問題です。しかも化学全体の中で最後の設問ですから,本当は難しいのではないかと思ってしまいかねません。いちおう,柔軟な適応力を見る,ということでしょう。

以下のような問題でちょっと慣れておくと,新しい場面に驚かずに済むでしょう。

東京凰籃学院教材から - ex.26

 次の化合物はデキストリンの一種である。糖類に関する知識及び下の説明を参考にして,この化合物の特徴と応用可能性について考察せよ。

A cyclodextrin has a polar, hydrophilic outside and a relatively nonpolar lipophilic inside. This leads naturally to two important results: (a) into its lipophilic interior a cyclodextrin typically takes as a guest, not an ion, but a nonpolar organic molecule or the non-polar end of an organic molecule; and (b) its hydrophilic exterior confers water solubility on the resulting complex.

 

以上のように,センター化学が易しいということは,逆に,上のように,「きちんと易しく」考えないといけないということです。

問題文の言っている意味さえわかれば,面倒な計算は要らないということであり,題意をとらえる国語力がきわめて重要ということになります。

これが,センター化学の本質です。

なお,上の,酸素の赤いシクロヘキサアミロースの描画データを以下に載せておきます。急いで作ったので拙いですが,よろしければご利用ください。chemfigパッケージを使っています。

\chemfig{%
  ?
    (
    -[:-60,1.5]\color{red}{O}
    -[,1.5]-[:-15,1.5](-[:30]CH_2OH)-[:-60,1.5]O-[:-105,1.5]
      (
      -[:-120,1.5]\color{red}{O}
      -[:-60,1.5]-[:-75,1.5](-[:-30]CH_2OH)-[:-120,1.5]O-[:-165,1.5]
        (
        -[:-180,1.5]\color{red}{O}
        -[:-120,1.5]-[:-135,1.5](-[:-90]CH_2OH)-[:-180,1.5]O-[:135,1.5]
          (
          -[:120,1.5]\color{red}{O}
          -[:-180,1.5]-[:-195,1.5](-[:-150,1.5,,4]HOCH_2)-[:120,1.5]O-[:75,1.5]
            (
            -[:60,1.5]\color{red}{O}
            -[:120,1.5]-[:105,1.5](-[:-210,1.5,,4]HOCH_2)-[:60,1.5]O-[:15,1.5]
            <[:-70,1.5](-[:-30]OH)-[:-120,1.5,,,line width=3pt,cap=round](-[:-210] HO)>[:-170,1.6]
            )
          <[:-10,1.5](-[:30]OH)-[:-60,1.5,,,line width=3pt,cap=round](-[:-150] HO)>[:-110,1.6]
          )
        <[:50,1.5](-[:90]OH)-[:0,1.5,,,line width=3pt,cap=round](-[:-90,,,2] HO)>[:-50,1.6]
        )
      <[:110,1.5](-[:150]OH)-[:60,1.5,,,line width=3pt,cap=round](-[:-30] OH)>[:10,1.6]
      )
    <[:-190,1.5](-[:-150]OH)-[:120,1.5,,,line width=3pt,cap=round](-[:30] OH)>[:70,1.6]
    )
  <[:-130,1.5](-[6]OH)-[:180,1.5,,,line width=3pt,cap=round](-[2] OH)
  >[:130,1.5](-[:240,1.5]\color{red}{O}-[4,1.7])-[:50,1.5]( -[,1.5] O?)-[2]CH_2OH
}

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